初詣と除夜の鐘

諏訪神社の大晦日の夜、午後十一時半をまわるともう本殿前には人集りが出来ている。年が明けると同時に本殿の扉が開き、一斉にお賽銭を入れて新年のお参りが始まるのである。ここ数年本殿前でカウントダウンがある。参拝の順番を待っていると養福寺の除夜の鐘が聞こえてきたりして、「ああ、一年がたったのだなあ」と思うのである。谷中ではいくつかの寺で除夜の鐘をつくが、零時をまわる頃からつき始める鐘の音は、冷えきった新年の夜空に響渡る。また邪悪な心を拭うようにつく鐘は、腹の底から振るえて心地よい。この時に振る舞われる甘酒は新年そうそう有難いものとなる。1988.1.1


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