ゲルの組立

草原に暮らす遊牧民の住居ゲルの建て方の解説。分解は大凡それに準じています。


 ゲルを組み立てるには二〜三人で約一時間、分解にも同様の時間を要す。荷ほどきしたら、ハンと呼ばれる析りたたみ式の壁を取り出し、一つずつ円を描くようにして広げて紐で繋ぎ合わせていく。ゲルの大きさはこのハンの枚数で決まる。格子状になったハンの交叉部分には、ウデルと呼ばれるラクダの皮を硬くした止め具を使っている。

1992.8 フフスグル

  ハンを繋いで建てる場所が決定したら、その中心にトーノという天窓を置き、更に扉から入れることのできないベッドやタンスなどの大きな家財道具も予め入れておく。そして南の方角が入口となるよう壁にを繋ぎ合わせ扉を取り付ける。一般的なゲルは五枚のハンからなり、室内の直径は約八メートルになる。カラー
扉を取り付けて壁が出来たら、一人がバガンという二本の柱で天窓を持ち上げ、オニーと呼ばれる屋根棒を天窓の穴に差し、ゲルの四隅から壁に取り付けていく。この時、天窓の四隅からも壁に紐を結んでおく。
 屋根棒の末端にあるザガラダガと呼ぶ輪っかをハンの上端にかけて屋根と壁の骨組を完成させていく。この状態でもゲルはぐらついたりしないのである。

扉の枠に固定された二本の紐が、壁の骨組みを圧迫するようにして張りを出させる。この時、天窓から壁に結んであった紐で屋根の傾きなどを修正しておく。内で天窓を支えていた人は扉から出て外を手伝う。

 

ゲルの骨組が完成したら室内の内側に来る布を被せていく。その布の外側からイスキィと呼ばれるフェルトを被せていくのだが、布を必要としなければ直接フェルトを被せていくこともある。天窓から手で引っ張って
屋根や壁にかけた布は、屋根に被さるようにしてハンに結んでいく。そしてフェルトを被せて保温に工夫するのである。壁にかけるトーラクと呼ばれるフェルトにも紐で結んでいく。ゲルには紐をよく用い、服のように重ねて保温につとめるのである。
フェルトを被せ終えたらゲルを一つに包むガトルブレスと呼ばれる布を被せ、三本の紐で壁の外側を固定する。天窓にはウルフと呼ばれる布をおおい、半分折り返して明かりを入れる。また生活が始まればストーブを設置して、天窓から煙突を出す。
入り口方向から見たゲル内部の断面図。中央にストーブが置かれ、その手前に家畜の糞の入った燃料箱が置かれている。家具や食料、馬具などは壁に沿って置かれていく。ゲルの東側は女性の場で、調理の火加減を調整しやすいように煙突は反対側にきている。

ゲル奥から扉の方を見た断面図。扉からは最初に固定した二本の紐が見えている。ゲルの中と外では別世界なのだが、どちらも落ち着く空間なのである。

戻る