ゲルの紹介

ゲルとはモンゴルの遊牧民の暮らす住居のことである。

 ゲルとはモンゴルの遊牧民の暮らす住居のことである。通常ゲルは数件建ち並び、これを一軒のお宅としアイルと呼んだりする。また日本ではパオとも呼ぶが、それは漢語で言う包(パオ)であって、梅棹忠夫著作集第2巻の「モンゴル研究」によると「漢人が好んで食べる包子(パオズ)の形に似ているので、漢人はこの名でモンゴル・ゲルを呼んでいる」のだそうである。
 モンゴルの草原で暮らす遊牧民にとって、ゲルとは草原に建つ家のことをさす。ゲルは基礎を造った固定家屋と違って、移動するための分解・組立が容易に工夫された家なのである。
外形は風に対処するために円形で屋根に向かって流線形をなしている。そして夏は壁際の裾をめくって風を通し、冬はフェルトを重ねるなどをして防寒する。
 室内の空間は壁で仕切るようなことはせず、一つの室を共有するので、そこは家族団欒の居間であり、台所もあって寝室でもある。しかし生活の煩わしさはなく、むしろこれが家族の団結を強める要因ともなっているように思える。
 木でできた扉は、高さ約一・五メートル。ゲルの外壁が内側にかしいでいるため、かならず外側に開くようになっている。扉のノブは決まって向かって右側にある。錠は必要に応じて付けたり付けなかったりしている。50年ぐらい前までは扉は付けず、イスキィとよぱれるフェルトを入口に下げ、上にめくって入るようにしていた。博物館にはそうした古いゲルが展示してある。
 扉を開けるとすぐに生活の臭いが伝わってくる。ゲルのなかは意外と整然としていて、生活用品で溢れているわけでもない。長年の経験が伝承され、室内の空間を最大限に利用出来るよう最も能率の良い配置が考え出されたのだろう。
 必ず扉の右側にあるノブをギイッと手前に引くと、一瞬「暗い」と思えるゲルの内部になるる。よく見ると人の顔があり、家具が目に入ってくるが、その明かりは天窓からのものであることはすぐ気付く。その敷居をまたいでパタンと扉を閉めると外界の音が遮断され、今度は静粛なゲル独特の音が伝わって来る。そして生活臭も。
 扉付近の屋根は低く、一歩二歩と進んで中央に近付けば、屈まなくても立っていられるようになる。挨拶は大体この間にする。ゲルに入ってからのマナーはホームページ「ぞすらん」お作法の広場
http://www.gld.mmtr.or.jp/~shiho/homepage/manner.htm   のゲルで学べます。


 

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